「うちの子、庭に出すと猛烈に穴を掘るんだけど大丈夫かな」「寝る前に布団をガリガリするのはなぜ?」——犬が掘る行動って、見ていて可愛いけれど正直ちょっと困る場面もありますよね。花壇が穴だらけになったり、ソファの生地がほつれたり、真夜中に布団ホリホリの音で起こされたり。犬仲間と話していても「うちも掘るよ!」という声はとても多いんです。
結論から言うと、犬が掘るのはほとんどが本能に根ざした自然な行動で、いきなり「問題行動」と決めつける必要はありません。ただし、掘る場所(地面・布団・飼い主の体)や状況によって意味はまったく違います。理由を取り違えたまま叱ってしまうと、逆に掘りがひどくなったり、別の困りごとに発展したりすることもあります。
この記事では、犬が掘る7つの理由を「地面」「布団・ソファ」「飼い主の体」の場所別に整理し、子犬・成犬・シニアや犬種ごとの違い、そして無理なくやめさせる・付き合っていく手順まで、ドッグラン仲間に教えるような感覚でまとめました。読み終わるころには、愛犬のホリホリを見て「今はこういう気持ちなんだな」と読み取れるようになるはずです。
・犬が掘る7つの理由と、場所(地面・布団・飼い主)ごとの意味の違い
・テリアやダックスなど「掘りやすい犬種」と子犬〜シニアの傾向
・掘り癖と上手に付き合い、困る掘りだけ減らす具体的な手順
・叱って逆効果になる失敗パターンと、気をつけたい掘りのサイン
犬が掘るのはなぜ?まず知っておきたい行動の全体像
愛犬のホリホリを理解する第一歩は、「掘る=困った行動」という思い込みを一度外すことです。掘る行動は、犬にとってごはんを食べるのと同じくらい自然な本能。まずは全体像をつかんでおくと、あとの理由がすっと入ってきます。
犬の掘りは「やめさせるもの」ではなく「読み解くもの」。掘る場所と状況から理由を見極めれば、困る掘りだけをピンポイントで減らせます。まずは行動を悪者にしないことが出発点です。
犬が掘るのは異常ではなく、生まれ持った本能
犬が掘るのは、基本的に異常でも問題でもありません。犬の祖先であるオオカミは、野生で安全に眠るための巣穴を掘り、獲物を土に埋めて保存し、獲物を追って地面を掘っていました。その名残が、家庭で暮らす現代の犬にもしっかり残っているのです。だから「掘る=悪いこと」と捉えて全部やめさせようとすると、犬にとってはストレスになります。まず押さえたいのは、掘る行動そのものは自然だということ。困るのは「掘る場所」や「掘る量」であって、行動自体を悪者にしないのが出発点です。子犬でもシニアでも、程度の差はあれ掘るしぐさは見られます。無理にゼロにするのではなく、掘っていい場面と困る場面を切り分けて考えていきましょう。
掘る「場所」で意味がまるで変わる
掘る理由を読み解くカギは、どこを掘っているかです。同じホリホリでも、庭の土を掘るのか、布団やソファを掘るのか、飼い主の膝やお腹を掘るのかで、犬の気持ちはまったく違います。ざっくり分けると、地面を掘るのは巣穴づくりや狩猟・体温調節といった本能寄りの理由、布団やソファは寝床を整えたり匂いをつけたりする理由、飼い主の体は「かまって」「甘えたい」という要求やコミュニケーションの理由が中心です。愛犬が掘り始めたら、まず「どこを掘っているか」を観察するクセをつけると、原因の見当がぐっとつけやすくなります。場所を無視して一律に対応すると的外れになりやすいので、この視点はとても大切です。
犬が掘る理由は大きく7つに整理できる
掘る行動の理由は無数にあるように見えて、整理すると大きく7つにまとめられます。①巣穴づくり(安全な寝床を求める)、②食料やおもちゃを隠す・掘り出す、③暑さ寒さをしのぐ体温調節、④獲物を追う狩猟本能、⑤寝床を整える・匂いをつける、⑥かまってほしい・甘えたいという要求、⑦退屈やストレスの発散——この7つです。多くの場合、犬は複数の理由が重なって掘っています。たとえば「退屈していて、かつ暑いから涼しい土を掘る」というように、単一の原因とは限りません。だからこそ、次の章からは場所別に理由を掘り下げ、あなたの愛犬がどのパターンに当てはまりそうかを一緒に見ていきます。
地面や庭をガリガリ|土を掘る4つの理由
もっとも分かりやすいのが、地面や庭を掘る行動です。散歩中やドッグラン、お庭で見られるこの掘りには、犬本来の本能がぎゅっと詰まっています。代表的な4つの理由を見ていきましょう。
安全な寝床を求める「巣穴づくり」の名残
地面を掘る行動でもっとも根源的なのが、巣穴づくりの本能です。野生時代の犬の祖先は、外敵から身を守り、暑さ寒さをしのげる安全な寝床として、地面を掘って巣穴を作っていました。地中は気温が安定していて、風雨や敵からも隠れやすい、いわば天然のシェルターだったのです。家庭犬になった今もこの本能は残っていて、庭の隅や涼しい木陰の土を掘って、体をすっぽり収めようとする子がいます。とくに落ち着ける場所を探しているときや、ソワソワと安心できる居場所を求めているときに出やすい行動です。掘ったくぼみに丸くなって寝ていたら、それは「ここを寝床にしたい」というサイン。叱るより、家の中に安心できる寝床を用意してあげるほうが根本的な対応になります。
おやつやおもちゃを「隠す・掘り出す」ための行動
お気に入りのガムやおもちゃをくわえて庭に行き、穴を掘って埋める——そんな行動を見たことはありませんか。これは、獲物を一度に食べきれないときに土に埋めて保存していた、祖先の食料貯蔵の習性が由来です。犬にとっては「大事なものを取られないように隠しておく」という、ごく合理的な行動なんです。逆に、以前埋めた場所を掘り返して取り出そうとすることもあります。多頭飼いで「取られたくない」という気持ちが強い子や、もともと物を隠すのが好きな子に出やすい傾向があります。困る場合は、おやつを与える場所を室内に限定したり、埋められて困るものを庭に持ち出させないようにするのが現実的です。隠すこと自体は本能なので、頭ごなしに叱っても犬には理由が伝わりにくい点は覚えておきましょう。
埋めたおやつを数日後に掘り返して食べる子もいますが、土に埋まったものは傷んでいることも。庭で「隠す」が習慣になっている子は、掘り返して食べないよう、埋めた場所をこっそり回収しておくと安心です。
暑さ・寒さをしのぐ「体温調節」のための穴掘り
意外と見落とされがちなのが、体温調節のための穴掘りです。犬は人のように全身で汗をかけないため、体温を下げるのが得意ではありません。そこで、夏は表面の乾いた土を掘りのけて、下のひんやりした湿った土を出し、そこに体を伏せて涼をとろうとします。逆に冬は、風を避けて暖をとれるくぼみを作ろうとして掘ることもあります。真夏に庭の日陰でせっせと掘って寝そべっていたら、それは「暑いよ、涼みたい」というサインかもしれません。この場合に大切なのは、掘る行動を止めることより、涼しく過ごせる環境を用意してあげること。室内なら風通しやひんやりマット、屋外なら日陰や水飲み場を整えると、掘って涼をとる必要そのものが減っていきます。
獲物を追う「狩猟本能」|テリアやダックスに強い
地面の下の小動物の気配を感じて掘る、というのも犬らしい理由です。土の中のモグラやネズミ、虫などの匂いや音に反応して、獲物を掘り出そうとするのです。この傾向がとくに強いのが、狩猟犬として改良されてきた犬種。ジャックラッセルテリアをはじめとするテリアグループや、アナグマ狩りのために生み出されたダックスフンドは、地面を掘る本能がもともと強く組み込まれています。JKC(ジャパンケネルクラブ)の犬種グループ分けでも、こうした犬種は地中の獲物を追う役割を担ってきた歴史があります。うちの子がやたら掘るなと感じたら、犬種のルーツを調べてみると納得できることも多いですよ。掘るのが仕事だった犬たちにとって、掘る欲求を満たす機会をつくってあげることが、ストレスケアにもつながります。
庭や地面を掘る心理はこちらの記事でさらに詳しく掘り下げています。

「庭に出すと一心不乱に土を掘る」「ベッドや布団をホリホリしてから寝る」「ソファをガリガリ掘って困っている」——穴を掘る犬の行動に、戸惑ったことはありませんか。や…
布団・ソファ・ベッドをホリホリする心理
室内でよく見られるのが、布団やソファ、犬用ベッドを掘る行動です。土がないのに掘るしぐさをするのは、地面掘りとは少し違った心理が働いています。寝る前のあのホリホリには、ちゃんと意味があるんです。
寝床を整える|眠る前のホリホリは安心の準備
寝る前に布団やベッドをカリカリ、クルクル回ってから掘る——これは寝床を整える本能的な行動です。野生時代、犬の祖先は寝る前に地面を掘ってくぼみを作り、草や土をならして寝心地のよい安全な寝床を整えていました。その名残で、家庭犬もふかふかの布団を掘って「自分にちょうどいい形」に整えようとするのです。掘ったあとにその場でクルンと丸くなって寝たら、それは寝床づくりが完了した合図。眠る前のルーティンとして出ることが多く、リラックスして安心している証拠でもあります。布団が乱れて困る場合は、掘っても崩れにくい厚手のベッドや、犬が落ち着く毛布を専用に用意してあげると、被害を最小限にしながら本能も満たせます。
自分の匂いをつける「なわばり・場所づくり」
犬の足の裏には汗腺があり、掘るしぐさで自分の匂いをその場所につけているとも言われます。ソファや布団を掘るのは、「ここは自分の場所」という匂いのマーキングと、居心地のいいスペースづくりを兼ねている場合があるのです。とくにお気に入りの場所を繰り返し掘る子は、そこを自分のテリトリーとして確保したい気持ちが強いのかもしれません。この行動自体は問題ではありませんが、掘る勢いでソファの生地が傷むのは困りもの。対策としては、その子専用の掘ってもいいマットやブランケットをお気に入りスポットに置いてあげると、被害を一点に集められます。無理にその場所から引き離すより、「掘っていい代わりのもの」を差し出すほうが、犬も納得しやすいです。
布団やカーペットを激しく掘り続け、生地や自分の爪を傷めてしまうほどの場合は、退屈やストレスがたまっているサインかもしれません。「掘るのをやめさせる」より先に、運動量や生活リズムを見直してあげましょう。
退屈・エネルギー過多で掘ってしまうケース
寝床づくりとは別に、「やることがなくて掘る」ケースもあります。散歩や遊びが足りず、体力や気持ちが有り余っていると、犬はその発散先として布団やソファを掘ることがあります。とくに若くて活発な犬や、もともと運動量の多い犬種は、退屈だと掘る・噛む・吠えるといった行動に出やすい傾向があります。掘る時間帯が「留守番中」「かまってもらえない夕方」などに偏っているなら、退屈が原因の可能性が高めです。この場合、掘る行為だけを止めても根本解決にはなりません。散歩の質を上げる、知育トイでおやつを探させる、短時間でも遊びの時間を増やすなど、エネルギーの出口を用意してあげることがいちばんの対策になります。掘りが減るだけでなく、犬の満足度も上がります。
布団やケージの床を掘る子への正しい向き合い方
ケージの床やクレートの中を掘る子もいます。これは「落ち着ける寝床を整えたい」「もう少し快適にしたい」という気持ちの表れであることが多いです。硬い床だと寝心地が悪く、くぼみを作ろうとして掘り続けてしまうこともあります。対応としては、まず寝床の快適さを見直すこと。適度なクッション性のあるマットを敷く、静かで落ち着ける場所にケージを置く、といった工夫で掘りが自然と減ることがあります。逆に、掘るたびに構ったり出してあげたりすると、「掘れば要求が通る」と学習してしまうことも。落ち着いているときにこそ声をかけ、掘って要求してきたときは過剰に反応しないメリハリが、遠回りに見えて効果的です。
床やケージを掘る理由については、こちらでさらに具体的に解説しています。

くつろいでいたはずの愛犬が、急にフローリングやベッドを前足でガリガリ。床に穴があくわけでもないのに、なぜあんなに一生懸命掘るのか不思議に思ったことはありませんか…
飼い主の体や膝を掘るのはどんな気持ち?
「ソファでくつろいでいると、犬が私の膝やお腹をホリホリしてくる」——これも掘る行動の一種です。地面や布団と違い、相手が飼い主なので、そこには人とのコミュニケーションの意味が強く込められています。
「かまって・遊んで」の要求サイン
飼い主の体を前足で掘るいちばん多い理由は、「かまってほしい」という要求です。犬は前足を使って人に触れることで、注意を引こうとします。飼い主が忙しくしているときや、遊んでほしいとき、おやつが欲しいときに、膝や腕を掘るようにトントン・ガリガリしてくるのはその典型。多くの場合、目をキラキラさせたり、しっぽを振ったりと、明るい表情を伴います。ここで毎回すぐに応じてしまうと「掘れば要求が通る」と覚えてしまうので、要求のたびに全部叶えるのは考えものです。とはいえ愛情表現でもあるので、落ち着いて掘ってきたときは軽く応え、しつこく要求してきたときはあえて反応しない、といったバランスが理想です。
甘え・安心を求める「子犬返り」のような行動
飼い主の体を掘るしぐさには、甘えや安心を求める気持ちが表れていることもあります。子犬が母犬のお腹を前足で押して母乳をねだった名残とも言われ、飼い主を安心できる存在として「甘えたい」ときに出やすい行動です。撫でてほしい、そばにいたい、安心したいというときに、膝の上でホリホリしてそのまま丸くなる子も多いですよね。これは信頼関係ができている証でもあり、基本的には微笑ましい行動です。無理にやめさせる必要はありませんが、爪が伸びていると飼い主の肌や服を傷つけてしまうので、こまめな爪切りは忘れずに。甘えのホリホリには、静かに撫でて応えてあげると、犬も満たされて落ち着いていきます。
ソワソワ落ち着かないときのカーミングシグナル
掘る行動は、犬が自分の気持ちを落ち着けようとする「カーミングシグナル」の一種とされることもあります。カーミングシグナルとは、不安や緊張を感じたときに自分やまわりを落ち着かせるためにとる行動のこと。あくびや体をブルブルさせるのと同じように、そわそわして飼い主の体や近くの布を掘ることがあるのです。たとえば来客や雷、慣れない環境などで緊張しているときに、掘るしぐさが出やすくなります。この場合、掘るのを叱るとかえって不安を強めてしまうことがあります。大切なのは、犬が何に不安を感じているのかを見極め、その要因をやわらげてあげること。安心できる場所に移動させたり、落ち着いた声で寄り添ったりすることで、掘る必要そのものが減っていきます。
飼い主を掘る子は、爪が伸びていると服や肌を引っかけてしまいがち。甘えのホリホリを気持ちよく受け止めるためにも、爪は白い部分を数ミリ残す程度にこまめに整えておくと、お互いに快適です。
飼い主をホリホリする心理は、こちらの記事でより詳しくまとめています。
ソファでくつろいでいると、愛犬が急に前足で飼い主の膝やお腹を「ホリホリ」と掘り始めた——犬と暮らしていると、こんな場面によく出会います。掘っても穴が空くわけでも…
掘り方でわかる気持ち|年齢・犬種で変わる傾向
同じ「掘る」でも、年齢や犬種によって出やすさや意味合いは変わります。愛犬のホリホリをより正確に読み解くために、レベル別・犬種別の視点を持っておきましょう。ここには独自の比較データも用意しました。
子犬・成犬・シニアで掘る意味が違う
掘る行動は、ライフステージによって背景が変わります。子犬期は好奇心と遊びが中心で、なんでも掘って確かめたい時期。エネルギーも有り余っているので、遊びの延長で掘ることが多いです。成犬になると、寝床づくりや体温調節、要求といった目的のはっきりした掘りが増えてきます。一方でシニア犬が、これまでしなかったのに急に掘り続けるようになった場合は、少し注意が必要です。加齢に伴う不安感や、落ち着かなさが背景にあることもあるからです。年齢によって「どんな掘りが自然か」の基準が変わるので、いつもと違う掘り方をしていないか、という視点で見てあげると変化に気づきやすくなります。子犬なら発散、成犬なら目的、シニアなら変化に注目、と覚えておくと便利です。
掘りやすい犬種・そうでない犬種【プロドッグ調べ】
犬種のルーツによって、掘る本能の強さにはかなり差があります。地中の獲物を追っていた狩猟犬系は掘りが強く、そうでない犬種は比較的おだやか。あくまで傾向ですが、犬種グループごとの掘りやすさを独自にまとめると、以下のようなイメージです。愛犬選びや、うちの子の理解に役立ててください。
| タイプ | 代表的な犬種グループ | 掘る傾向 |
|---|---|---|
| 地中の獲物を追った犬 | テリア種・ダックスフンド | 強い |
| 運動量の多い活発な犬 | 牧羊犬・使役犬系 | やや強い(退屈時) |
| 室内向きの愛玩犬 | 小型の愛玩犬グループ | おだやか(寝床づくり中心) |
※犬種の役割・グループ分けはJKC(ジャパンケネルクラブ)の分類を参考にした、プロドッグ調べの傾向整理です。同じ犬種でも個体差は大きいので、あくまで目安としてご覧ください。
掘る前後のしぐさで気持ちを読み取る
掘る理由を見極めるには、掘る前後のしぐさをセットで観察するのがコツです。しっぽを高く振りながら楽しそうに掘っているなら、遊びや好奇心。掘ったあとにその場で丸くなるなら、寝床づくり。飼い主の顔を見ながら前足でトントンしてくるなら、要求。一方、耳を後ろに倒して落ち着きなく掘っていたり、あくびやブルブルを挟んだりしているなら、不安を落ち着けようとしているのかもしれません。掘る行動だけを切り取るのではなく、表情・しっぽ・耳・掘る場所・時間帯まで含めて見ることで、驚くほど気持ちが読み取れるようになります。犬は言葉を話せない代わりに、全身でサインを出しています。ホリホリはその中でも分かりやすいメッセージのひとつなのです。
実は、掘る行動はゼロにしなくていい
意外と知られていないのですが、掘る行動は無理にゼロにしないほうが、犬にとっても飼い主にとっても幸せなことが多いんです。掘るのは犬の本能であり、適度に満たされることでストレス発散や気持ちの安定につながります。困るのは「花壇を掘る」「ソファを破る」といった特定の場面であって、掘る行動そのものではありません。だからこそ、目指すのは「掘りの完全禁止」ではなく「掘っていい場所へ誘導すること」。庭に砂場コーナーを作ったり、掘ってもいいマットを用意したりして、本能を安全に発散させてあげるほうが、結果的に困る掘りが減っていきます。行動を封じ込めるより、上手に流してあげる——この発想の転換が、掘り対策の一番の近道です。
犬の掘り癖と上手に付き合う・減らす手順
ここからは、困る掘りを実際に減らしていく具体的な手順です。ポイントは「原因を見極めて→発散させて→掘っていい場所を作る」の順番。力ずくで止めるのではなく、犬が納得できる形で導いていきます。
ステップ1|まず「なぜ掘るのか」原因を見極める
掘り対策で最初にやるべきは、原因の見極めです。ここまで見てきたように、掘る理由は本能・体温調節・退屈・要求・不安などさまざま。原因が違えば対策もまったく変わるので、いきなり止めにかかるのは失敗のもとです。まず1週間ほど、「いつ・どこで・どんな表情で掘っているか」をメモしてみましょう。留守番中に布団を掘るなら退屈や不安、夏に庭を掘るなら体温調節、飼い主の前で掘るなら要求、といった具合に、記録するとパターンが見えてきます。原因が絞れれば、対策の8割は決まったようなもの。時間はかかりますが、この観察をスキップして表面的に叱ると、たいてい遠回りになります。まずは犬の掘りを「翻訳」するところから始めましょう。
ステップ2|運動と知育で掘るエネルギーを発散させる
退屈やエネルギー過多が原因の掘りには、発散の機会を増やすのがいちばん効きます。具体的には、1日の散歩を「ただ歩く」から「匂いを嗅がせる・探索させる」時間に変えるだけでも、犬の満足度は大きく上がります。目安として、朝晩それぞれ20〜30分、匂い嗅ぎをたっぷり許すニオイ散歩を取り入れてみてください。さらに、フードを知育トイに詰めて探させる、留守番前に5分だけノーズワーク(おやつ探し)をする、といった頭を使う遊びも効果的です。体と頭の両方を使わせると、犬は満足して休息に向かいやすくなり、余ったエネルギーで掘る必要が減っていきます。運動が足りている犬は、そもそも困った掘りをしにくいもの。掘りを減らす前に、まず発散、と覚えておきましょう。
ステップ3|掘っていい「ホリホリOKゾーン」を作る
本能を満たしつつ被害を防ぐ決め手が、掘っていい場所を用意することです。庭があるなら、隅に砂場や掘り専用コーナーを作り、そこにおやつやおもちゃを浅く埋めて「ここを掘ると楽しい」と教えます。室内なら、掘ってもいい厚手のマットやスナッフルマットを決まった場所に置き、そこで掘ったときにほめてあげましょう。ポイントは、OKゾーンで掘ったら必ずいいことがある、と結びつけること。最初は飼い主が一緒に掘るふりをして誘導すると、犬も理解しやすいです。花壇やソファなど困る場所を掘り始めたら、叱るのではなく、静かにOKゾーンへ誘導して、そこで掘れたらほめる。この繰り返しで、少しずつ掘る場所が移っていきます。禁止より誘導、が合言葉です。
庭を掘るたびに大声で叱ったら、飼い主が見ていない隙にこっそり掘るようになった——これはよくある失敗です。犬は「掘ること」ではなく「飼い主がいるときに掘ること」を叱られたと学習し、隠れて掘るようになります。叱るより、掘っていい場所へ誘導してほめるほうが、遠回りに見えて確実です。
ステップ4|「掘れば要求が通る」を作らない接し方
要求やかまってほしさが原因の掘りでは、接し方の一貫性が大切です。掘って要求してきたときにそのつど構ってしまうと、犬は「掘れば飼い主が動く」と学習し、掘りがどんどん増えていきます。かといって完全に無視するのも寂しい話。おすすめは、落ち着いているときに自分から声をかけて構い、掘って要求してきたときはあえて過剰に反応しない、というメリハリです。要求のホリホリがおさまって落ち着いた瞬間に「いい子だね」と応えると、「掘らずに待つといいことがある」と学んでいきます。家族全員で対応をそろえることも重要で、一人だけ甘やかすとルールが崩れてしまいます。焦らず、数週間単位でゆっくり変えていくつもりで取り組みましょう。
気をつけたい掘りとよくある質問
掘る行動の多くは自然なものですが、なかには少し気にかけたほうがいいケースもあります。最後に、注意したい掘りのサインと、飼い主さんからよく聞かれる質問をまとめておきます。
いつもと違う「過剰な掘り」は気にかけたいサイン
ほとんどの掘りは心配いりませんが、いつもと様子が違う場合は気にかけてあげましょう。たとえば、シニア犬がこれまでしなかったのに急に掘り続けるようになった、一日中同じ場所を掘らずにいられない、爪や肉球を傷つけても掘るのをやめない——こうした過剰で反復的な掘りは、不安や落ち着かなさが強く出ているサインのことがあります。加齢に伴う変化や、常同的な行動と関連する場合もあるとされています。ここで大切なのは、飼い主だけで原因を決めつけないこと。生活環境の見直しで落ち着くこともありますが、明らかにいつもと違う・気になるという場合は、早めに獣医師に相談すると安心です。あくまで「行動の変化に気づいてあげる」ことが、飼い主にできる大切な役割です。
布団を掘るのをやめさせようと、掘るたびに体を押さえつけて制止したら、寝床に近づくのを嫌がるようになった——という失敗もあります。掘りを力ずくで封じると、犬はその場所や飼い主の手を怖いものと結びつけてしまうことも。発散と誘導でゆるやかに変えるのが、遠回りに見えて安全な道です。
掘って穴だらけになった庭はどうすればいい?
庭が穴だらけで困っている、という相談はとても多いです。まず、犬がよく掘る場所には理由があります。涼しい土がある、小動物の匂いがする、地面がやわらかいなど。対策としては、前述のホリホリOKゾーンへの誘導に加えて、掘られたくない花壇に大きめの石やフェンスで物理的に近づけないようにする方法があります。また、掘ってできた穴は早めに埋め戻すこと。掘りかけの穴を放置すると、犬は「続きを掘ろう」と同じ場所に戻ってきやすくなります。夏場の体温調節が理由なら、日陰やひんやりできる場所を別に用意すると掘りが減ります。庭掘りは「叱る」より「掘る理由をなくす+掘っていい場所を用意する」の合わせ技が、いちばん現実的で長続きします。
まとめ|犬が掘るのは本能、上手に付き合うのがコツ
犬が掘るのは、そのほとんどが祖先から受け継いだ自然な本能です。巣穴づくり、食料を隠す、体温調節、狩猟本能、寝床を整える、匂いをつける、かまってほしい——掘る場所と状況を読み解けば、愛犬が今どんな気持ちなのかが見えてきます。大切なのは、掘る行動そのものを悪者にせず、困る掘りだけをゆるやかに減らしていくこと。叱って封じ込めるより、発散と誘導で導くほうが、犬にとっても飼い主にとっても幸せな結果につながります。
今日から実践できるポイントを、最後に整理しておきます。
- 掘る場所(地面・布団・飼い主)を観察して、まず理由を見極める
- 掘る理由は本能・体温調節・退屈・要求・不安など。原因ごとに対策を変える
- テリアやダックスなど狩猟犬系は掘りが強め。犬種のルーツを知ると理解が深まる
- 散歩の質を上げ、知育遊びでエネルギーを発散させると困る掘りが減る
- 「ホリホリOKゾーン」を作り、掘っていい場所へ誘導してほめる
- 叱る・押さえつけるは逆効果になりやすい。禁止より誘導を意識する
- シニア犬の急な掘りや過剰な掘りは、気になれば獣医師に相談を
まず最初の一歩としておすすめなのは、愛犬が「いつ・どこで・どんな表情で掘っているか」を数日メモしてみること。パターンが見えれば、対策はぐっと立てやすくなります。掘るのは犬が元気に本能を発揮している証でもあります。上手に付き合って、愛犬もあなたも心地よく暮らせる形を見つけていってくださいね。
犬種の役割やグループ分けについてはJKC(ジャパンケネルクラブ)公式サイト、犬の適正な飼い方については環境省・動物の愛護と適切な管理も参考になります。※最新情報は各公式サイトでご確認ください。
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