愛犬を撫でようと頭に手を伸ばしたら、スッと顔をそむけられた——そんな経験はありませんか。実は犬には「撫でられてうれしい場所」と「できれば触られたくない場所」がはっきりとあり、その違いを知らないまま撫でていると、よかれと思ったスキンシップが逆効果になってしまうことがあります。
結論からお伝えすると、犬を撫でる場所で正解とされるのは「犬が自分の舌でグルーミングできない部位」です。耳の後ろや胸、首まわりなどがそれにあたり、ここを上手に撫でると犬は目を細めてとろけるような表情を見せてくれます。逆に頭の上や口まわり(マズル)は、信頼関係がないうちは嫌がられやすい場所です。
この記事では、犬が喜ぶ撫でる場所7か所を顔まわり・体に分けて具体的に紹介し、嫌がる部位とその理由、初対面の犬への正しい撫で方の手順、犬種・年齢別の好みの違い、そして撫でている最中のサインの読み方まで、ドッグランで犬仲間と教え合うような目線でまとめました。今日から愛犬との距離がぐっと縮まるはずです。
・犬が撫でられて喜ぶ場所7か所と、とろけさせる触り方のコツ
・頭やマズルなど、犬が嫌がる場所とその行動学的な理由
・初対面の犬を怖がらせない撫で方の正しい手順
・犬種・年齢別の好みの違いと、喜ぶ/嫌がるサインの見分け方
犬を撫でる場所で気持ちは9割伝わる|まず知りたい基本の考え方

犬にとって撫でられることは、ただ気持ちいいだけの行為ではありません。仲間とのきずなを確認し合う大切なコミュニケーションです。だからこそ、どこを・どう撫でるかで、犬に伝わる気持ちは大きく変わります。まずは撫でる前に押さえておきたい基本の考え方から整理していきましょう。
犬が喜ぶのは「自分で舐められない場所」という共通点
犬が撫でられてうれしい場所には、はっきりした共通点があります。それは「自分の舌では届かない場所」だということです。耳の後ろ、首、胸、顎の下などは、犬が自分でグルーミング(毛づくろい)できない部位にあたります。犬はもともと群れで暮らす動物で、仲間同士でこうした届きにくい部位を舐め合う「アログルーミング」という習性を持っています。飼い主が撫でてあげることは、この仲間からの毛づくろいの代わりになっているのです。逆に、足先やしっぽのように自分で舐めて手入れできる場所は、他者に触られる必要性が低く、あまり歓迎されません。撫でる場所に迷ったら、まずは「この子が自分で舐められない場所かどうか」を基準にすると失敗が減ります。子犬のうちから全身を触られることに慣らしておくと、成犬になってからのケアや診察もスムーズになります。
撫でる前に犬のコンディションを3秒チェックする
同じ場所を撫でても、そのときの犬の状態によって反応はまるで違います。撫でる前に、犬がリラックスしているか・こちらに関心を向けているかを3秒ほど観察するのが正解です。耳が自然に下がり、体に力が入っておらず、しっぽがゆるやかに動いているなら撫でてよいサイン。反対に、体がこわばっている、何かに集中している、食事中や睡眠中といった場面では、そっとしておくのが正しい対応です。食事中や寝ているときに突然触ると、犬はびっくりして反射的に身を引いたり、まれに噛みつく姿勢を見せたりします。これは性格が悪いのではなく、不意打ちに対する自然な防衛反応です。撫でたい気持ちが先走って犬の都合を無視すると、「人の手は急に来て怖い」という学習につながり、かえって触らせてくれなくなります。
飼い主と初対面の人では「正解」がまるで変わる
同じ犬でも、信頼している飼い主が撫でる場合と、初対面の人が撫でる場合では正解がまったく異なります。飼い主であれば顎の下や胸はもちろん、頭や背中まで受け入れてくれる犬も多いですが、初対面の相手にいきなり頭の上から手を伸ばされると、ほとんどの犬は身構えます。頭上から来る手は犬の視界に入りにくく、「何をされるのか分からない」という不安につながるためです。初対面のときは、犬の正面に立ちはだからず、横向きの姿勢でしゃがみ、手の匂いをかがせるところから始めます。撫でる順番にも「親しさの段階」があると考えると分かりやすいでしょう。
犬が仲間同士で舐め合う「アログルーミング」は、汚れを落とすだけでなく、群れの安心感やきずなを確認する社会的な行動です。飼い主の手による「撫で」も同じ役割を果たしていると考えると、なぜ自分で舐められない場所を喜ぶのかが腑に落ちます。
犬が喜ぶ撫でる場所【顔まわり編】触ってほしい3か所
まずは顔まわりの喜ぶ場所から見ていきましょう。顔まわりは犬の表情が出やすく、撫でたときの反応も分かりやすいエリアです。ここで紹介するのは耳の後ろ・顎の下・首まわりの3か所。どれも犬が自分では手入れしづらく、信頼する相手に触られると心地よさを感じやすい部位です。
「耳の後ろ」はとろける犬が続出する人気スポット
顔まわりで最も反応が良いのが耳の後ろです。ここは犬が後ろ足でかこうとしても届きにくく、撫でてもらえると「かゆいところに手が届く」心地よさがあります。指の腹を使って、耳の付け根から後ろにかけて円を描くようにゆっくりマッサージするのがコツです。多くの犬がうっとりと目を細め、頭を手に押しつけてくることもあります。場面としては、散歩から帰ってきて落ち着いたときや、夜にソファでくつろいでいるときなど、犬がリラックスしているタイミングが向いています。注意したいのは、耳の中(耳道)まで指を入れないこと。耳の内側は敏感でデリケートな部位なので、あくまで外側の付け根まわりにとどめます。爪を立ててガリガリこするのも逆効果なので、力加減はやさしく一定に保ちましょう。
「顎の下」は信頼している相手にだけ許す特等席
顎の下は、犬がリラックスしているときに撫でると特に喜ぶ場所です。頭の上と違って手が犬の視界に入りやすく、「何をされるか分かる」安心感があるため、警戒されにくいのが理由です。手のひらを上に向け、下からそっと包み込むように顎を支えて、指先でゆっくりなでてあげます。犬が顎を手に預けてくるようなら、心を許しているサインです。初対面の犬と仲良くなりたいときも、頭ではなく顎の下から手を差し出すと受け入れられやすくなります。ただし、寝ている犬の顎にいきなり触れるのは避けましょう。また、顎の下を触られるのを嫌がる犬もいます。口に近い部位なので、フードやおやつへの執着が強い犬、口まわりを触られた嫌な記憶がある犬は警戒することがあります。嫌がるそぶりを見せたら無理をしないことが大切です。
「首まわり・胸元」は安心感を伝えやすいエリア
首から胸元にかけては、犬を落ち着かせたいときに撫でると効果的な場所です。首の側面から肩にかけてを、毛並みに沿って手のひら全体でゆったりとなでると、犬の呼吸が深くなり、リラックスモードに入りやすくなります。子犬が興奮して落ち着かないときや、来客でそわそわしているときに、この首まわりをゆっくり撫でると気持ちが切り替わりやすいです。ただし、首輪まわりをつかむような触り方や、上から首根っこを押さえる動きは、犬にとって「制御された」「叱られる」サインに受け取られることがあります。あくまでなでる・さするイメージで、つかまないことを意識しましょう。首の前側(喉元)は人間でいうと無防備な急所にあたるため、初対面ではいきなり触らず、慣れてから少しずつが安心です。

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犬が喜ぶ撫でる場所【体編】背中から腰まで4か所

続いては体のエリアです。顔まわりに慣れてきたら、胸・肩甲骨まわり・背中・腰へと範囲を広げていきましょう。体は撫でる面積が広く、犬の全身の力が抜けていくのを感じやすいエリアです。ここでは反応の良い4か所を、独自の比較データとあわせて紹介します。
「胸」は初対面でも触らせてくれる安全地帯
胸は、犬が比較的どんな相手にも触らせてくれる安全地帯です。理由は、犬の視界に手が入りやすく、頭上から来る圧迫感がないため。初対面の犬に手を伸ばすときも、頭ではなく胸をそっと下から撫でるのが鉄則です。前足の間あたりを、手のひらで円を描くようにやさしくなでると、多くの犬が安心した表情を見せます。散歩中に他の飼い主さんの犬を撫でさせてもらうときも、まずは胸から、が礼儀でありセオリーです。注意点として、勢いよくポンポンと叩くのは「撫でる」ではなく「刺激」になり、興奮させてしまうことがあります。落ち着かせたいなら、あくまでゆっくりとした一定のリズムを保ちましょう。
「肩甲骨・背中」は毛並みに沿ってが鉄則
肩甲骨から背中にかけては、犬がうっとりしやすい広いマッサージゾーンです。背骨の両側の筋肉を、首から腰へ向かって毛並みに沿ってゆっくりさすると、犬は全身の力を抜いていきます。手のひら全体を密着させ、ほどよい圧をかけるのがコツです。指先だけでチョコチョコ触るより、面で触れるほうが安心感を与えられます。逆毛になでたり、背骨の上を直接ゴリゴリ押したりするのは避けましょう。背中側は犬から手が見えにくいので、初対面でいきなり背後から触るとビクッと驚かせてしまいます。必ず犬が手の存在を認識してから、前方から後方へと移っていくのが安全です。
「腰・しっぽの付け根」は反応が分かれる上級者向け
腰からしっぽの付け根は、好きな犬は腰を浮かせて催促するほど喜ぶ一方、苦手な犬もいる反応の分かれる場所です。ここを軽くトントンと刺激すると、うっとりして腰を突き出してくる犬がいます。これは気持ちいいツボに近い反応です。一方で、しっぽの付け根は神経が集まる敏感な部位でもあるため、強く触られるのを嫌がる犬や、過去に痛い思いをした犬は警戒します。まずは弱めの力で軽く触れてみて、犬が体を寄せてくるようなら続け、体を引いたりこわばったりするようならすぐにやめる、という反応を見ながらの対応が正解です。シニア犬は腰やお尻まわりに違和感を抱えていることもあるため、いつもと様子が違う場合は無理に触らないようにします。
| 受け入れられやすい撫で方 | 嫌がられやすい撫で方 |
|---|---|
| 手のひら全体で面で触れる 毛並みに沿ってゆっくり 犬の視界に手を見せてから 横から・下から手を伸ばす | 指先で速くチョコチョコ触る 逆毛をなでる 頭上からいきなり手を出す ポンポン強く叩く |
プロドッグ調べで、飼い主が「うちの子はここが好き」と感じている部位を体感ベースで整理すると、おおよそ次のような傾向が見えてきます。あくまで目安ですが、撫でる順番を考えるときの参考にしてください。
| 撫でる場所 | 喜ぶ犬の多さ | 初対面での適性 |
|---|---|---|
| 耳の後ろ | ◎ | △ |
| 顎の下 | ◎ | ○ |
| 胸 | ○ | ◎ |
| 背中・肩甲骨 | ◎ | △ |
| 腰・しっぽの付け根 | ○〜△ | × |

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逆効果になることも|犬が嫌がる撫でる場所と理由
喜ぶ場所を知ったら、同じくらい大切なのが「嫌がる場所」を知ることです。よかれと思って撫でた場所が、実は犬にとってストレスだった、ということは少なくありません。ここでは犬が触られたくない代表的な部位と、その行動学的な理由を解説します。
「頭の上」を好む犬は実は少数派という事実
意外と知られていませんが、頭の上をなでられるのが本当に好きな犬は少数派です。犬と仲良くなろうとして、つい頭をなでなでしたくなりますが、頭上から伸びてくる手は犬の視界に入りにくく、「手がどこへ行くのか分からない」不安を生みます。とくに信頼関係ができていない相手だと、多くの犬は顔をそむけたり、身を縮めたりします。飼い主が頭をなでても平気な犬は、それだけ強い信頼を寄せている証拠ともいえます。場面としては、しつけのごほうびに頭をポンポンする人がいますが、犬にとってはごほうびになっていないことも。褒めるときは、犬が本当に喜ぶ胸や顎の下を撫でるほうが、気持ちが伝わりやすくなります。頭は「慣れた相手が、犬が見ている状態で、やさしく」が最低条件と覚えておきましょう。
「マズル(口まわり)」は敏感な急所と心得る
口まわり、いわゆるマズルは、犬にとって非常にデリケートな部位です。食べる・吠える・においをかぐといった重要な機能が集まる場所で、ヒゲ(触毛)も生えている敏感なエリアです。ここを不用意に触られると、多くの犬は顔を引いたり、嫌がるそぶりを見せたりします。とくに初対面でマズルをわしづかみにするのは、犬にとって強い拘束と感じられ、防衛的な反応を引き出しかねません。歯みがきや口のケアでどうしても触る必要があるときは、子犬のうちから少しずつ慣らし、触ったらおやつ、という良い印象とセットにしていくのが正しい進め方です。いきなり押さえつけるのではなく、「口まわり=嫌なこと」にならないよう丁寧に進めましょう。
「足先・しっぽの先・お腹」は信頼度が試される場所
足先、しっぽの先、お腹も、多くの犬が触られたくない場所です。足先は地面に直接触れる敏感な部位で、爪切りや肉球ケアで嫌な思いをした記憶があると、触られるだけで身構える犬もいます。しっぽの先は神経が通っていて痛みを感じやすく、急につかむのは禁物です。お腹は内臓を守る無防備な急所で、ごろんと見せてくれても「撫でて」の合図とは限りません。緊張のあまり固まって見せている場合もあるため、本当にリラックスしているかを表情で見極める必要があります。これらの部位は、強い信頼関係があってはじめて触らせてくれる場所と考え、焦らず段階を踏みましょう。
「かわいいから」と毎回頭の上をガシガシなでていたら、近づくだけで犬が顔をそむけ、やがて手を伸ばすと唸るようになった——これは典型的な失敗パターンです。原因は、犬が嫌がる場所を本人の意思を無視して触り続けたこと。対策は、頭への接触をいったんやめ、胸や顎の下など犬が喜ぶ場所だけを「短く・やさしく」から再スタートすること。嫌な記憶を上書きするには時間がかかりますが、無理をしないことが回復の近道です。
初対面の犬を撫でるときの正しい手順

友人の犬や散歩中に出会った犬を撫でさせてもらう場面では、飼い主に対する以上に慎重な手順が必要です。ここでは初対面の犬を怖がらせず、気持ちよく受け入れてもらうためのステップを順番に解説します。
まずは飼い主に「撫でていいですか」と確認する
初対面の犬に手を出す前に、必ず飼い主にひと声かけるのが大前提です。人なつこく見える犬でも、知らない人が苦手だったり、ケガや持病で触られたくない事情があったりします。「撫でてもいいですか?」と確認し、「この子はどこを撫でられるのが好きですか?」と聞ければ理想的です。飼い主が一番その犬を分かっているので、好きな場所やNGな場所を教えてもらえれば失敗が激減します。散歩中のあいさつでは、犬同士を無理に近づけないことも大切です。突然の対面はトラブルのもとになるため、まずは人間同士が落ち着いて会話し、犬が自分から関心を示すのを待ちましょう。
正面に立たず、横向きでしゃがんで手の匂いをかがせる
許可をもらったら、犬の正面に立ちはだからないのがコツです。人間が正面から覆いかぶさるように近づくと、犬は威圧を感じます。体をやや横に向け、犬の高さに合わせてしゃがみ、手の甲または手のひらをそっと差し出して匂いをかがせます。これは「私は怖くないよ」と伝える犬語のあいさつです。犬が自分から匂いをかぎに来て、リラックスしているようなら次に進めます。このとき、じっと目を見つめ続けないことも大切です。犬の世界では、見つめ合うことは挑戦や緊張のサインになり得るため、視線はやわらかく外し気味にします。手を急に動かさず、ゆっくりとした動作を心がけましょう。
頭ではなく胸・顎の下から、短く撫でて反応を見る
匂いのあいさつが済んだら、いよいよ撫でます。最初に触るのは頭ではなく胸や顎の下です。下から、または横からゆっくり手を伸ばし、数秒だけ撫でてみます。ポイントは「一気に長く撫でない」こと。数秒撫でたら手を止め、犬がもっと撫でてほしそうに体を寄せてくるか、それとも離れていくかを観察します。これは海外のドッグトレーナーが推奨する「consent test(同意の確認)」という考え方で、犬の意思を尊重する撫で方です。寄ってくれば続け、離れればそこでやめる。この積み重ねが「この人は無理をしない安心できる人だ」という信頼につながります。
犬種・年齢で変わる撫でられたい場所の好み
撫でる場所の基本は共通していますが、犬種や年齢、そして一頭ごとの性格によって好みは変わります。ここでは小型犬・中型犬・大型犬の傾向と、子犬・成犬・シニア犬それぞれの注意点を整理し、目の前の愛犬に合った撫で方のヒントをお伝えします。
小型犬・中型犬・大型犬で異なる撫でる強さと範囲
体の大きさによって、心地よい撫でる強さと範囲は変わります。チワワやトイプードルなどの小型犬は体が小さく骨格も繊細なので、指の腹を使ってやさしく、狭い範囲を撫でるのが基本です。大きな手で頭からガシガシなでると、犬にとっては圧が強すぎます。柴犬やコーギーなどの中型犬は、首から背中にかけて手のひら全体で撫でるとちょうどよく受け止めてくれます。ゴールデン・レトリーバーやラブラドールといった大型犬は、しっかりした圧で胸や肩まわりをマッサージするように撫でると喜ぶ傾向があります。被毛のタイプによっても変わり、ダブルコートの犬は毛の流れに沿ってさすると気持ちよさそうにします。犬種ごとの性格の違いを知っておくと、撫で方の引き出しが増えます。
子犬期は「全身を触られることに慣れる」練習が大切
子犬の時期は、喜ぶ場所を撫でることに加えて、全身を触られることに慣らす「社会化」の練習が重要です。生後2〜4か月ごろは新しい刺激を受け入れやすい時期なので、足先・口まわり・耳・しっぽなど、将来ケアで触る必要がある場所も、おやつとセットで少しずつ触っておきます。このとき無理強いは禁物で、嫌がったらすぐやめ、触れた瞬間にほめる・ごほうびをあげるをくり返します。子犬期にていねいに慣らしておくと、成犬になってからの爪切りや歯みがき、動物病院での診察がぐっと楽になります。逆に、嫌がるのに押さえつけて触り続けると、「触られること=嫌なこと」という苦手意識が定着してしまうので注意しましょう。
シニア犬は「痛くない場所をやさしく」が基本
シニア犬になると、若い頃は平気だった場所を触られるのを嫌がるようになることがあります。関節や腰、お尻まわりに違和感を抱えていることがあり、これまで通り撫でただけでも不快に感じる場合があるためです。シニア期は、犬が自分から寄せてくる場所をやさしく、短めに撫でるのが基本です。急に撫でられるのを嫌がるようになった、特定の場所を触ると逃げる・声を上げるといった変化が見られたときは、体に不調が隠れていることもあるので、気になる場合は獣医師に相談しましょう。耳が遠くなった老犬は、撫でようとして急に触れると驚くことがあるので、視界に入ってから手を出す配慮も大切です。
「うちの子は背中が好き」「うちの子は顎の下じゃないとダメ」というように、好みは犬種以上に一頭ごとの個性が大きく出ます。教科書通りの正解にこだわりすぎず、愛犬の反応を見ながら「この子だけの好きな場所マップ」を更新していくのが、いちばんの上達法です。
撫でているときのサインの読み方|喜ぶ・嫌がるを見抜く
どこを撫でるか以上に大切なのが、撫でている最中の犬の反応を読み取ることです。犬は言葉を話せませんが、体や表情でたくさんのサインを出しています。喜んでいるサインと「やめて」のサインを見分けられれば、撫で方は一気に上達します。
「もっと撫でて」のとろけるサイン
犬が撫でられて気持ちよく感じているときは、分かりやすいサインを見せてくれます。代表的なのは、うっとりと目を細める・表情がやわらかくとろける・体の力が抜けてもたれてくる・そのまま眠ってしまう、といった反応です。撫でる手を止めると前足でちょいちょいと催促してきたり、鼻先で手を押し上げてきたりするのも「もっと撫でて」のおねだりです。こうしたサインが出ているなら、その場所・その強さが今のその子の正解だということ。場面を問わず、犬がこちらに体を預けてくる瞬間は、信頼が深まっている合図でもあります。サインをきちんと受け取って応えてあげることで、犬は「この人は気持ちを分かってくれる」と感じ、きずなが強まっていきます。愛犬の愛情表現をもっと知りたい方は、こうしたサインのバリエーションを知っておくと毎日の触れ合いがより楽しくなります。

「うちの犬、私のことどう思ってるんだろう?」と考えたことはありませんか。犬は言葉を話せませんが、体全体を使って「好き」をちゃんと伝えています。しっぽの振り方、目…
「もうやめて」のカーミングシグナルを見逃さない
反対に、犬が「もうやめてほしい」と感じているときのサインも知っておく必要があります。あくび・舌で鼻先をペロッとなめる・顔をそむける・体を小さく引く・視線を合わせず固まる、といった行動は、犬が緊張やストレスを感じているときに出す「カーミングシグナル」です。お腹を見せて固まるのも、必ずしも「撫でて」ではなく「降参・やめて」の意味のことがあります。これらのサインが出たら、撫でるのをいったんやめて犬に距離を取らせてあげましょう。サインを無視して撫で続けると、犬は「言っても伝わらない」と学習し、最終的に唸る・歯を当てるといった強い拒否に発展することがあります。やさしい段階のサインのうちに気づいてやめることが、噛みつきトラブルを防ぐ何よりの予防になります。
しっぽを振っている=喜んでいる、とは限らない
「しっぽを振っているから喜んでいる」と思い込むのは、よくある勘違いです。しっぽを振る動きは感情が高ぶっているサインで、その中身は喜びだけでなく、興奮・緊張・警戒のこともあります。判断のポイントは、振り方と全身の様子をあわせて見ること。体全体をくねらせて低めの位置で大きく振っているなら友好的なことが多い一方、しっぽを高く立てて小刻みに速く振り、体がこわばっているなら警戒や興奮のサインかもしれません。撫でるかどうかを判断するときは、しっぽだけでなく、耳・口元・体の緊張具合を総合的に見て決めるのが正解です。一部分だけを切り取って判断しないことが、犬の本当の気持ちを読み取るコツです。
あくびや顔そむけのサインに気づかず、「気持ちよさそうだから」と撫で続けた結果、犬が歯を当ててきた——これも起こりがちな失敗です。原因は、しっぽを振る=喜びと思い込み、緊張のサインを見落としたこと。対策は、撫でる前と途中で必ず犬の表情と体のこわばりをチェックし、少しでも嫌がるそぶりがあれば手を止めること。犬は段階を踏んで「やめて」を伝えています。早いサインのうちに応じることが、お互いの安全につながります。
犬の気持ちを読み取る力は、撫でる場面だけでなく、しつけや暮らし全般の土台になります。より深く理解したい方は、犬と人の関わり方について公的機関がまとめた情報も参考になります。環境省「動物の愛護と適切な管理」では、動物との適正な付き合い方の考え方が紹介されています。
まとめ:犬を撫でる場所は「相手の気持ち」を読みながら選ぶ
犬を撫でる場所の正解は、犬が自分の舌では届かない「耳の後ろ・顎の下・首まわり・胸・背中・腰まわり」にあります。これらは仲間同士で毛づくろいし合う習性とつながった、犬が心地よさを感じやすい部位です。一方で、頭の上やマズル、足先やお腹は、信頼関係ができていないうちは嫌がられやすい場所。撫でる場所を知ることと同じくらい、犬が出すサインを読み取ることが大切だと、この記事ではくり返しお伝えしてきました。
大事なのは、人間の「撫でたい」気持ちを優先するのではなく、犬の「撫でられたい」気持ちに寄り添うこと。今日のポイントを振り返っておきましょう。
- 犬が喜ぶのは「自分で舐められない場所」。耳の後ろ・顎の下・胸・背中が鉄板
- 頭の上を本当に好む犬は少数派。初対面では胸や顎の下から撫でる
- マズル・足先・お腹は敏感な急所。強い信頼があってはじめて触れる場所
- 初対面は「飼い主に確認→横向きでしゃがむ→匂いをかがせる→短く撫でて反応を見る」の順で
- 小型犬はやさしく狭く、大型犬はしっかりした圧で。子犬は社会化、シニアは痛くない場所を
- とろけるサイン(目を細める・体を預ける)と、やめてのサイン(あくび・顔そむけ)を見分ける
- しっぽを振る=喜びとは限らない。全身の様子を総合して判断する
まずは今夜、愛犬がリラックスしている時間に、耳の後ろをゆっくり撫でることから始めてみてください。目を細めてとろけてくれたら、それがその子の「好き」のサインです。少しずつ好きな場所を探りながら、愛犬だけの「気持ちいいマップ」を一緒に作っていきましょう。撫でることは、言葉のいらない最高のコミュニケーションです。
※犬の様子にいつもと違う変化が見られ、特定の場所を触ると痛がる・嫌がるといった場合は、気になるときは獣医師に相談してください。最新の情報は公式サイトでご確認ください。

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